東海大学 現代教養センター 田中彰吾研究室

研究プロジェクト

(研究代表者分)

2020年度〜2023年度,科学研究費助成事業・基盤研究(B),「身体化された自己:ミニマルからナラティヴへ」(課題番号20H04094,代表:田中彰吾)

(研究概要)
本研究は、脳-身体-環境の相互作用から創発する現象として自己をとらえる「身体化された自己 embodied self」の概念のもとで、ナラティヴ・セルフ(物語的自己)について、将来の実証科学的研究を推進する理論モデルを構想するものである。従来、身体性にもとづく自己の科学的研究はミニマル・セルフ(最小自己)の哲学的理論をもとに進められてきたが、この概念は、自己経験が時間性のもとで物語として編成されていく過程への着目を欠いている。そのため、自己についての科学的研究は、現状では一種の行き詰まりに直面している。本研究では、身体性への着目を残すことで従来の科学的な自己研究との連続性を保ちつつ、現象学的哲学に依拠してナラティヴ・セルフの理論モデルを新たに提示する。実験心理学・哲学・精神病理学の各アプローチで研究を進め、新規性のある理論モデルを成果として発信する。

2020年度〜2021年度,科学研究費助成事業・新学術領域研究(研究領域提案型),「トランスカルチャー状況下における身体化された自己」(課題番号20H04585,代表:田中彰吾)

(研究概要)
本研究は「トランスカルチャー状況下における身体化された自己」と題し、急速にグローバル化する現代社会において日本的自己がどのように変化しつつあるのか(または変化していないのか)、身体性の観点から解明することを目的とするものである。本研究が依拠するのは現象学と認知科学の学際領域で発展してきた「身体化された自己(embodied self)」の理論であり、身体と環境の相互作用から創発する現象として自己を理解する。日本的自己をめぐる従来の議論は、「西洋vs日本」という二分法的な図式へのとらわれが強く、日本文化が不変の内在的本質を持つかのように考える傾向が強かった。本研究では、身体性に着目することでこのような傾向を改め、身体的経験への焦点づけの違いによって、文化的自己がさまざまに異なるしかたで構築されることを理論的に明らかにする。

2016年度~2017年度:科学研究費補助金・国際共同研究加速基金(国際共同研究強化),「Embodied Human Scienceの構想と展開」(課題番号15KK0057,代表:田中彰吾)

(研究概要)
Embodied Human Scienceは、自己意識と他者理解のモデル構築を2つの軸としつつ新たな現象学的人間科学の創出を目指すプロジェクトである。この国際共同研究では、自己意識に焦点を絞り、病理的経験との比較からその解明を目指した。具体的には、離人症と呼ばれる精神疾患を取り上げ、その症状に見られる「自己と身体の遊離状態」を当事者の語りに沿って理解することを試みた。明らかになったのは、この症状では、身体所有感が極端に低下して身体が自分のものとして経験できなくなるとともに、身体的経験を俯瞰するパースペクティヴへの同一化が強まり、直接経験の実感がない空虚な自己意識が残されるということである。

2015年度〜2019年度,科学研究費助成事業・基盤研究(B),「Embodied Human Scienceの構想と展開」(課題番号15H03066,代表:田中彰吾)

(研究概要)
本研究の目的は、「身体性人間科学(embodied human science)」の理論を新たに構想することにある。身体性人間科学とは、現象学にもとづく人間科学に対して、身体性認知のパラダイムを持ち込んだものである。助成期間中に主に取り組んだのは、(a)身体行為に基礎づけられた自己、(b)自他間の身体的相互行為身体に支えられた社会的認知と他者理解、を理論的に解明する作業である。一般向けの主な成果として『生きられた〈私〉をもとめて』(北大路書房、2017年)を出版した。

2015年度~2017年度:科学研究費補助金・挑戦的萌芽研究,「視点変換体験の質的研究に基づく自己意識と他者理解の理論モデル構築」(課題番号15K12634,代表:田中彰吾)

(研究概要)
本研究は、「視点変換体験」(ビデオカメラとヘッドマウント・ディスプレイを用いて通常とは異なる視点から自己の身体を知覚する体験)と称する体験について記述し、得られたデータに基づいて自己意識と他者理解の理論モデルを構築することを目的として始まったものである。体験プログラムを作成して8名にインタビューを実施したところ、視点変換体験が日常的な自己の様式を変容させ、身体外部の視点に同一化する自己と、体性感覚に同一化する自己に、自己意識を分裂させうることが明らかになった。他者の視点から自己を見る経験は日常生活でも想像上で生起しているが、これが知覚的に生起すると、自己の空間的分裂または拡張を促進すると考えられる。

2012年度~2014年度,科学研究費助成事業・基盤研究(C),「間主観性領域における身体知の機能を解明する現象学的・実験的研究」(課題番号24500709,代表:田中彰吾)

(研究概要)
本研究は、ひととひととのあいだで成り立つ社会的理解を、身体的な相互行為に基づいて解明することを目指したものである。従来の心の科学の議論では、ひとは一般に「心の理論」を用いて、他者の心的状態を推論によって理解すると想定されてきた。しかし、本研究の成果によると、最も基礎的な社会的理解は、他者の行為の意図を直接知覚すること、その意図に応じる行為を返すことから始まる。自他間のこの種の身体的相互行為が暗黙の社会的文脈を生成し、その文脈のうえで、私たちは言語的コミュニケーションを通じて明示的な相互理解に至るのである。このような意味で、私の身体と他者の身体のあいだが、間主観性の起源である。

2009年度~2011年度,科学研究費助成事業・若手研究(B),「「生活世界における身体知」の包括的理論モデルの創出」(課題番号21700607,代表:田中彰吾)

(研究概要)
身体知とは、「身体が知っている」タイプの知識を指す。身体知は、たんに運動スキルに限定されるものではなく、生活世界におけるさまざまな人間的経験にかかわるものである。本研究計画は、現象学的方法にもとづいて、身体知を包括的に理解する理論的な枠組みを創出することを目指した。この目標を実現するため、身体図式の三つの主要な側 面(身体運動、空間行動、身体的相互作用)について詳細に記述した。この記述を通じて、身体が「知の主体」として生成するプロセスを明らにした。

(共同研究)

  • 2020年度〜2022年度,科学研究費助成事業・基盤研究(A),「意識変容の現象学──哲学・数学・神経科学・ロボティクスによる学際的アプローチ」(課題番号20H00001,代表:田口茂)
  • 2019年度〜2021年度,科学研究費助成事業・基盤研究(B),「対人援助とセラピーにおける対話実践の身体性と社会性:対話空間のオラリティ研究」(課題番号19KT0001,代表:石原孝二)
  • 2018年度〜2021年度,科学研究費助成事業・基盤研究(B),「困難を示す生徒・学生のための生態心理学的アプローチによる学習環境デザイン」(課題番号18H01030,代表:森直久)
  • 2018年度〜2020年度,科学研究費助成事業・基盤研究(C),「非侵襲的脳幹賦活によるスポーツ&アートにおける運動学習促進」(課題番号18K10937,代表:山田洋)
  • 2017年度〜2021年度,科学研究費助成事業・基盤研究(A),「生態学的現象学による個別事例学の哲学的基礎付けとアーカイブの構築」(課題番号17H00903,代表:河野哲也)